HOME 幼少時代を振り返れば―居住感覚篇
幼少時代を振り返れば―居住感覚篇
PART.1:プランづくり12箇条
05.幼少時代を振り返れば―居住感覚篇
05.幼少時代を振り返れば―居住感覚篇
中国の哲学者・孟子の「孟母三遷」をご存知でしょうか。
教育熱心な孟子の母が、子どものためを思い墓の近くにあった家を市の近くに移します。しかし、学問をするにはいまひとつ適さないと考え、さらに学校の近くに移したというお話。つまり、孟子に好ましい教育環境を与えるために、自らを犠牲にして三度移転したというものです。「居は気を移す」とは、その孟子の言葉で、居住環境の好悪は人に少なからず影響を与えるという意味の言葉です。
この「居は気を移す」は、どうやら小学校時代、12歳くらいまでがポイントのようです。ここで言う「気」とは、居住体験に基づく空間に対するセンスとか心理だけではなく、価値観や行動基準のようなものも含んでいます。つまり、居住環境は人間性の形成に少なからず影響を与える、ということです。
これが事実なら、子育てにおける居住環境にはもっと心を配った方が良さそうです。たとえば、学校や塾から帰宅した子どもに何か嫌なことがあっても、まっすぐ自分の部屋に逃げ込めてしまうような構造の家でいいのでしょうか。
考えてみると、女性の社会進出が今のように当たり前ではなかった時代、お母さんは家にいて、家族のためにあれこれきめ細かく家事をしてくれているので、ちょっとした声も必ず母さんの耳に届くという状態が普通でした。
こうした家だけが必ずしもよいとは言いませんが、その昔、ご自分が幼少時代に育った環境にまで遡って、次代を担うお子さまの居住環境を考えるのも意味のあることではないでしょうか。
もちろん、今と昔では居住性能もデザインも大きく異なりますが、あなたらしい暮らし方、住まい方のヒントがここに隠されているかもしれません。